フィッシャー氏の「強気」がはらむ歴史的リスク

著名投資家ケン・フィッシャー氏は、紛争が市場に与える影響は限定的であり、長期的には株価は上昇し続けるという持論を展開している。
彼の「太陽はまた昇る」というスタンスは、平時においては優れた指針だ。
しかし、私は彼の言葉を鵜呑みにすることの危うさを指摘せざるを得ない。

思い出してほしい。彼は2008年のリーマンショック直前まで強気だった。
市場が歴史的な転換点を迎え、構造的な崩壊が始まっている局面において、過去の平均的なデータに基づいた楽観論は、しばしば「正常性バイアス」として機能し、投資家から逃げ場を奪う。
2026年の今、私たちが直面しているのは、単なる調整ではなく「構造的な地雷」の埋設である。

統計に現れない死角:プライベートクレジットの時限爆弾

フィッシャー氏が見落としている、あるいは過小評価している最大の懸念の一つが、プライベートクレジットの問題だ。
これまでの公的債務危機とは異なり、この債務は銀行システムの外部、つまり水面下で蓄積されている。

過去の統計には反映されないこの巨大な「レバレッジの焦げ付き」は、中堅テック企業やヘルスケア企業のデフォルト率上昇という形で、すでに現れ始めている。
金利が想定以上に高止まりする中で、これらの企業の資金繰りが行き詰まる連鎖的崩壊は、ある日突然、市場の流動性を蒸発させるだろう。

ドットコムバブルの再来:AI狂乱相場の末路

彼は現在のAIブームを、1990年代後半のドットコムバブルとは異なると主張するかもしれない。
しかし、現状のAI銘柄への資金集中とバリュエーションの膨張は、1999年の狂乱に酷似している。

計算資源への巨額投資が利益を生む前に、投資資金がNVIDIAのようなインフラ提供者にのみ還流し、肝心のサービス提供側が赤字に喘ぐ構造。
この「中抜き」が続く限り、AIバブルは持続不可能だ。
歴史を振り返れば、この手の「稀なケース」こそが、のちに歴史を塗り替える大暴落の主役となるのである。

2026年夏、連鎖的崩壊のトリガーを引くのは何か

2026年4月現在、インフレは再燃し、原油価格は高騰している。
FRBが利下げできないという現実を市場が飲み込んだ時、AI半導体への期待だけで支えられてきた砂上の楼閣は崩れ始める。

私が予測するトリガーは、2026年夏に訪れる「円キャリー取引」の逆回転だ。
米国株の下落と日米金利差の縮小が重なれば、世界中の資産が無差別に投げ売りされる「死の螺旋」が始まる。
権威ある投資家が「太陽は昇る」と唱え続けている間に、私たちはキャッシュ比率を高め、嵐が過ぎ去った後に残る真の価値を拾い上げる準備をすべきなのだ。

この記事をシェアする

#ケン・フィッシャー#AIバブル#プライベートクレジット#2026年経済

新着記事

メニュー

リンク