流動性プレミアムという名の「時間稼ぎ」

ゴールドマン・サックス(GS)の資産運用部門責任者、クリスティン・オルソン氏が語る「教育的局面」という言葉には、強い違和感を禁じ得ない。
現在、プライベートクレジット市場では十数本のファンドで償還請求が相次ぎ、解約制限(ゲート)が発動されている。
これを彼らは「投資家が仕組みを試しているプロセス」と強弁するが、私から見れば単なる手数料ビジネスの延命工作に過ぎない。

彼らが超富裕層に対し、ポートフォリオの4分の1をオルタナティブ投資に割くよう助言しているのは、2026年現在で3兆6000億ドルに上る運用残高を維持し、高額な手数料を長期にわたって囲い込むためだ。
「不便だから儲かる」という流動性プレミアムの論理は、裏を返せば、出口が塞がったパニックルームに投資家を閉じ込めているのと同じである。

NVIDIAチップという「高価な通行手形」の賞味期限

さらに深刻なのは、その投資資金がNVIDIAの「ボッタクリチップ」に吸い込まれている現状だ。
現在のAIインフラ投資は、もはや演算装置の購入ではなく、それを持っているだけで資金調達が可能になる「高価な通行手形」を買い漁っている状態である。
しかし、私が思うに、この「CUDA一強」という神話はすでに崩壊が始まっている。

AMDのROCmの進化や、ローカル環境で動作する軽量かつ高性能なAIモデルの台頭により、ハードウェアの制約は急速に消えつつある。
300万円以上するH100のようなチップも、3年も経てば推論効率の悪い「旧世代の電気喰い」に成り下がる。
10年スパンの拘束を強いるファンドの裏側にある資産が、わずか数年で陳腐化するハードウェアだとしたら、そのポートフォリオは出口において何も残らない「ガラクタ」の山になるだろう。

連鎖するデフォルトと「負の遺産」の正体

現に、プライベートクレジットの現場では「隠れデフォルト」が常態化している。
現金で利息を払えない企業が、借金を積み増して利息に充てるPIK(現物払い)に逃げ込んでおり、実質的なデフォルト率は公表値の数倍に達している。
NVIDIAへの貢ぎ物で膨れ上がった負債が、実需を伴わないまま焦げ付き始めるなだれ現象の入り口に、我々は立っているのだ。

もし融資先のAI企業が破綻し、担保のデータセンターが手元に残ったとしても、それは悲劇でしかない。
窓もなく人間用ではない設計の「機械の箱」をマンションに改築することは不可能であり、残されるのは維持費だけを食いつぶすコンクリートの廃墟である。
金融虚業が描く数字上の資産が蒸発する中で、最後に残るのは、自らの手で動かせる技術や、物理的に実在する土地だけだという現実に、 we は立ち戻るべきだろう。

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#マクロ経済#AIバブル#プライベートクレジット

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