支配された供給網と「川下」の致命的な弱点

現在の「供給網の心臓部を握られた」地政学的リスクを前提とするならば、従来の「川下」や「加工貿易」に依存した産業モデルへの投資は、極めて高いリスクを孕んでいると私は考える。
製造業や小売業といった川下産業は、コスト転嫁の限界という壁に直面しているからだ。
原材料(川上)や物流(インフラ)の価格支配権を他者に握られている以上、コストが跳ね上がれば利益率は容易に圧搾されてしまう。

さらに深刻なのは、物理的な遮断リスクである。
インフラテロや逆封鎖が発生すれば、そもそも「作るための材料」が届かず、工場は沈黙を余儀なくされる。
どれほど優れた技術やブランド力があったとしても、エネルギーや原料という物理的な入力(インプット)がなければ、それらは全くの無力と化すのである。

通貨覇権の変質と資源国通貨の合理性

米ドルの覇権が揺らぎ、パワーバランスが資源供給側へとシフトする中で、通貨の持つ性質も変容しつつある。
私は、豪ドルやカナダドルといった資源国通貨が、単なる紙幣の信用を超え、現物資産への「引換券」としての性質を強めている点に注目している。
これは、実体のない数字としての資産から、物理的裏付けを持つ資産への逃避とも言えるだろう。

資源国通貨を持つことは、供給網の混乱下において購買力を維持するための合理的な生存戦略となる。
通貨の価値がその国の保有する資源という「実物」に裏打ちされているからだ。
世界が供給断絶の恐怖に晒されるほど、これらの「引換券」の価値は相対的に高まっていくに違いない。

生存戦略としての「物理的裏付け」への重心移動

もはや投資は、単なる収益率の追求ではなく、生存をかけたポートフォリオの再構築というフェーズに入っている。
私は、ポートフォリオの重心を「物理的な裏付け」がある方へ移すべきだという考え方は、極めて合理的であると確信している。
加工貿易という、他者の許容の上に成り立つビジネスモデルの脆弱性は、もはや隠しきれないレベルに達しているからだ。

インフラや資源という「物理の土台」を抑える側がルールを決める時代において、土台を持たぬ者の積み上げは常に崩壊の危機にある。
実体なき数字の羅列に依存するのではなく、物理的な入力源や資源国通貨へのアクセスを確保することこそが、この不透明な時代を生き抜くための最大の防壁となるのである。

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#経済分析#地政学#投資理論#サプライチェーン

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