住宅市場が突きつける「24カ月連続の不況」

ロイターが報じた4月の全米住宅建設業者指数(NAHB)は、私の目には米国の「メッキ」が剥がれ始めた決定的なサインとして映る。
指数は34と、市場予想の37を大きく下回り、7カ月ぶりの低水準を記録した。
業況判断の分岐点である50を24カ月連続で下回っている事実は、もはや一時的な調整ではなく、構造的な不況が定着したことを示している。

背景にあるのは、あまりに過酷な「二重苦」だ。
イラン情勢を巡る地政学リスクがエネルギー価格を押し上げ、それが資材コストに直結する。
一方で、30年物固定住宅ローン金利は4月初めに6.46%まで上昇した。
供給側である業者は「もはや回復は見込めない」と弱気に転じ、需要側である消費者は「今、家を買うのは自殺行為だ」と様子見を決め込んでいる。
この硬直状態は、将来的な深刻な住宅不足と、価格が下がらないまま停滞するスタグフレーションの火種となるに違いない。

クレジットカードという延命措置の終焉

なぜ、これほどの逆風がありながら、これまでの米国経済は「好調」を装うことができたのか。
私は、その正体はクレジットカードによる生活の「延命」だったと考えている。
家計はインフレによるコスト増を, 借金という名のカードで埋めてきたに過ぎない。

現在、米国のクレジットカード債務は1.2兆ドルという天文学的な数字に達している。
さらに恐ろしいのは、その金利が20〜25%という、もはや高利貸しと呼べる水準にあることだ。
低所得者層から始まった延滞率の急上昇は、この「借金で生活を回すモデル」が破綻したことを告げている。
世間が称賛する「強い雇用統計」も、その内実は歪んでいる。
生活のためにダブルワーク、トリプルワークを強いられる人々が増えれば、統計上の雇用数は「水増し」される。
一人が三つの職に就けば、それは三人分の雇用としてカウントされるからだ。
数字上の活況は、個人の疲弊の上に成り立つ砂上の楼閣に過ぎない。

見えないホームレスと地下経済の台頭

もはや実体経済の崩壊は、統計数字では追いきれない領域に達している。
私が最も危惧しているのは、かつての中流層さえもが「生存の淵」に立たされていることだ。
かつてのホームレスのイメージは路上生活だったが、今は「Vehicle Residency(車両居住)」という形に姿を変えている。
フルタイムで働きながら、家賃を払いきれずにバンや乗用車で寝泊まりするワーキング・プアが常態化しているのだ。

また、食料インフレがもたらした「フードスタンプ(SNAP)」の現金化や転売といった地下経済の拡大も、生活の切迫度を如実に物語っている。
支給された電子カードで購入した商品を現金に換え、他の生活必需品に充てる。
こうした生存戦略が横行する現場は、もはや「好景気」という言葉が届かない別世界である。
今の米国は、資産を持つ者が恩恵に浴する一方で、持たざる者が負債に追い詰められるという、極端な二極化の極致にある。
このメッキが完全に剥がれ落ちたとき、その反動は社会的な混乱を伴う大きなうねりとなるだろう。

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#米国経済#住宅不況#格差社会#インフレ影響

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